ライジングサン石油社宅(社宅群)

静かな住宅街への入り口にひっそりと建っていて、
注意しなければわからずに通り過ぎてしまう建築でした。
しかし、確かに通り面(北側)から見ると地味な印象は拭えませんが、
建物の南側へ廻ってみると、はっとするほどモダンで愛らしい顔立ちをしています。
また、
この建物について特筆すべき事は、レーモンドと同じチェコ出身の建築家であり、
当時事務所の所員であったベドリッヒ・フォイエルシュタインと共同設計している事、
また、構造はカトリック山手教会などの設計で知られるJ.J.スワガーが担当
平成2年まで中区山下町にあった同社の横浜本社も彼との共同設計でした。

外部からの入口は全部で3箇所ありますが、中は2世帯分に仕切られているようです。
同じく戦前の横浜に建てられたスタンダード石油会社の社宅とは違い、
いくつかの箱を組み合わせた、アシンメトリックで斬新なスタイルが特徴的で、
西側2階だけに設けられた小さなバルコニーや、ボウ・ウィンドウ状に膨らんだ1階中央部の居間、
その両側の部屋に取り付けられた大きな鉄製のサッシュなどがこの建物の程良いアクセントとなっています。
この社宅はもともと、広大な敷地に17棟も建てられたもので、学校や軍事施設などを除けば、
レーモンドの作品中、屈指の規模のプロジェクトだったと思います。
しかし、この建物群も人手に渡ってからは次々と取り壊しが進み、
かろうじてこの1棟だけは、伊藤忠商事社宅の管理人室として使用されてきましたが、
とうとう2000年3月に取り壊されてしまいました。
私は学生時代この近所で過ごしていた時期もあり、非常に残念に思います。(仁木)

ライジングサン石油社宅フラット(山手町)はこちら
Data
所在地:横浜市中区
構造:R.C.造2階
設計:アントニン・レーモンド
   ベドリッヒ・フォイエルシュタイン
施工者:清水組
建築年代:昭和4年

南側

北側(玄関)

南側ボウ・ウィンドウ

北側中央玄関

西側煙突


内部

木製の階段

大理石製?の暖炉



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