本町ビル
(旧帝国火災支店)

このビルはある意味、関内地区のランドマークとなり得る建物です。
旧第一銀行の一部曳き家・復元により、一歩その存在を譲ったかたちになったものの、
本来であれば、桜木町から弁天橋を渡り、関内地区に入ると、一番はじめに目にする近代建築物であり、
この建物を先頭に、神奈川県立歴史博物館、旧富士銀行横浜支店、横浜銀行協会・・・と続いていく、
「近代建築プロムナード」とも呼ばれるべき、本町通りのトップバッターに当たる建物なのです。

それにもかかわらず、意外にも見落とされがちな建物で、
何故か、横浜市が出版した「都市の記憶 横浜の近代建築」にも収載されていません。

しかしよく見れば、なかなか味わいのある良い建物であることがわかります。
このタイプの建物によく見られる、平坦かつ平凡になりがちなファサードを、
わずかな柱の凹凸のアクセントと、石積み風の石張りに煉瓦積み調の赤いタイルで覆い、
全体のバランスを崩さない程度の細かな模様のコーニスが、何とも上品な印象を醸しています。
3連の窓を玄関上部と5階のみに使っているあたりも面白い。
そして、その窓の配列や柱によって、水平・垂直方向を直線的に印象付けながらも、
実は玄関部分のアーチでやんわりと逃げているところが実に憎いところです。

皆さんも、お近くの近代建築を、今一度確認されてみてはいかがでしょうか。
古い建物には「味」があり、時には「ロマン」さえ感じることもあります。
意外と発見があるものですよ。(仁木)


Data
所在地:横浜市中区本町5-49
構造:R.C.5階
設計:
施工者:
建築年代:昭和4年

 
 

玄関内部



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