茶席菓子しげた倉庫

京浜急行日ノ出町駅近く、ビルの谷間に埋もれながらも、独特な空間を醸している不思議な建物があります。
表通りに面して営業している、和菓子の老舗「茶席菓子しげた」の倉庫として使われていた煉瓦造の蔵です。
和瓦を載せた日本の伝統的な蔵なのですが、西洋の工法(煉瓦造)を取り入れていることから
「近代建築の」部類に入れて良いのではと思い、この度掲載しました。
所有者のお話では「特殊なレンガを使っている」らしく、独特な色合いが特徴的です。
また、はっきりとは確認していませんが、積み方も完全な規則的ではないようにみえます。
目地を丸く盛上げる「丸目地」という、今ではあまり使われていない技法を用い、
少なくても横浜市内ではこのような蔵を、私は見たことがありません。

創業時からしばらくの間は水飴製造を主としていた同店ですが、当時はこの蔵に飴や砂糖を保管していたそうです。
大正7年の創建後、あの関東大震災の激震にも耐え、しかも火も燃え移らなかったために
中の砂糖や飴を民衆に持って行かれましたが、「あのおかげで助かりました」というかたが今でもいるそうです。
戦後はアメリカ軍に接収され、取り壊しになった蔵がいくつもあったそうですが(広場を確保したり、庭を確保するため)、
この蔵は軍の資材置き場になったために取り壊しを免れたとのことで、まさに激動の時代を生き残った建物です。 (仁木)

Data
所在地:横浜市中区長者町9-166
構造:煉瓦造
設計:
建築年代:大正7年頃
備考:

昭和3年、道路拡張のために20メートルほど曳き家し、現在の位置となったそうです。     



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