旧三井物産横浜支店倉庫
(前・日東倉庫日本大通倉庫)
日本大通の三井物産横浜ビルの角を曲がり、
同ビルのすぐ裏手に見える白煉瓦タイル張りの倉庫。
横浜の「隠れた歴史的遺産」旧三井物産横浜支店倉庫です。
その歴史は旧く、
あの横浜赤レンガ倉庫より早い明治43年7月の完成。
しかも屋根や柱部分は、日本最初期に属する鉄筋コンクリート工法により造られており、
建築史的価値の高い建築物であるといわれています。
また、事務所棟である三井物産横浜ビルは、日本初の全躯体鉄筋コンクリート造の建築物として全国的に名高く、
同じく遠藤於菟の手により、倉庫完成の翌月から着工されていることからも、
この倉庫は、日本の建築における歴史的快挙に至る流れの一部にあたる建物ということになります。
しかし、この倉庫の価値はこれだけにとどまりません。
それは我が国の近代史との関わりです。
ご承知のとおり、我が国の発展の礎は絹貿易により築かれたと言っても過言ではなく、
先に世界遺産に登録された「富岡製糸場と絹産業遺産群」のような近代的な大量生産システムをバックに、
大正9年には世界最大の生糸輸出国にまで成長を遂げることとなります。
旧三井物産横浜支店倉庫は、これら地方で生産された生糸を国外へ輸出するまでの保管を担い、
日本の発展を影ながら支え続けた功労者であります。
特に、関東大震災の時には壊滅的なダメージを受けた関内地区にありながら、
何らその影響を受けることなく、間もなく営業が再開されたという驚くべき記録が残っています。
これらのことから、すでに国重要文化財クラスに相当する建物であるとして各方面から評価の声があがっており、
さらには「富岡製糸場と絹産業遺産群」の一部として、
世界遺産に追加登録も可能となる建築物であると指摘する専門家もあらわれており、
この「隠れた歴史的遺産」、今まさに国レベルでの再評価、保存に向けた取り組みが待たれるところです。
緊急情報!!
旧三井物産横浜支店倉庫が解体されるという情報が一部新聞等にて報じられております。
我が国の発展を支えたこの尊い歴史遺産を後世に残すべく、
「旧三井物産横浜支店生糸倉庫を壊して欲しくない人々の会」により、署名活動が始められました。
皆さまのご協力をお願いいたします。
港ヨコハマのソウル(魂)、旧三井物産横浜支店生糸倉庫を壊さないで!
Data
所在地:横浜市中区日本大通14
構造:煉瓦3階 地下1階
(屋根と柱はR.C.造、床は木造)
設計:遠藤於菟
施工者:直営
建築年代:明治43年7月竣工 |
建築史的価値、近代史的価値に加え、景観上の価値を忘れてはいけません。
横浜にわずかに残る歴史的景観として重要な位置(日本大通り)に建ち、
三井物産横浜ビルと共に、今の建築では絶対に再現できない雰囲気を醸しております。 |
屋根と柱はR.C.造、壁は煉瓦造、床は木造という、ハイブリットな構造。
これひとつとっても、現存する明治期の建築として極めて稀有で価値のある建築です。
この写真は事務所棟のバックヤードから撮影したもの。
ファサードとは違って白煉瓦タイルで化粧されておらず、壁が煉瓦造であることがよくわかります。 |
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