不二家

賑やかな伊勢佐木モールの並びにある赤いビルディング、
日本で最も有名な洋菓子の老舗、不二家の建物がなんとレーモンドの作品なのです。
余談ですが、「モール」という概念を日本に持ち込んだのは、レーモンドの弟子である三沢浩だそうです。
(この伊勢佐木モールのデザインも彼の仕事によるものです。)

さて、この建物は、見れば見るほどに、その見事なスタイリングにため息が出てしまいます。
昭和の早い時期にこれだけのモダンなデザインは、さぞ当時の注目を集めたことでしょう。
特に建物の前面のほとんどを覆い尽くす、不意をつかれたようなガラスブロックの斬新な使い方は
単に魅せるためだけでなく、常に内部へ適度な自然光を供給する役目も果たしています。
この建物は6階建てですが、レーモンドの作品は広い敷地に横長の構造が多いので、
戦前の作品の中では珍しい部類に入るのでないかと思います。

現在1階は売店と食事&喫茶、2階は中華料理店になっています。
レーモンド作品の中で食事するのもなかなかオツなものです。
是非足を運んでみてください。(仁木)

※現在は白い塗装に変わっています。
Data
所在地:横浜市中区伊勢佐木町1-6-3
構造:R.C.造6階
設計:アントニン・レーモンド
施工者:戸田組
建築年代:昭和13年



昭和30年代の不二家ビル  (横浜絵葉書より)

米軍に接収されていたころのビル (昭和23年頃)。
YOKOHAMA CLUBの看板が見えます。



不二家ビルが建つまでのヒストリー(不二家WEBサイトから一部抜粋)
1910年(明治43年)
 藤井林右衛門(25歳)が横浜市元町2丁目86番地に洋菓子店を開店
1912年(大正元年)
 アメリカへ洋菓子事情視察と技術修得のため出発
1918年(大正7年)
 日本で初めてシュークリーム、エクレアなどを販売
1922年(大正11年)
 伊勢佐木町店開店
 フランス風ショートケーキの販売始める 1個8銭、クリスマス製品も販売する
1923年(大正12年)
 銀座6丁目店開店
 関東大震災により銀座、伊勢佐木町、元町の各店焼失
1924年(大正13年)
 銀座、伊勢佐木町店バラック建てで再開
1930年(昭和5年)
 合名会社不二家設立 社長 藤井林右衛門 出資金10万円
1935年(昭和10年)
 チョコレート・キャンディの生産開始 フランスキャラメルが大ヒットとなる
 ポパイキャラメル販売開始 ハートチョコレート販売開始
1938年(昭和13年)
 株式会社第二不二家を設立 資本金20万円
 合名会社不二家を合併 資本金60万円
 株式会社第二不二家の商号を、株式会社不二家と改称
 アントニン・レーモンド設計、戸田組の施工により、伊勢佐木町店をR.C.造で新築



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