旧三井守之助別荘

旧三井守之助別荘は、大磯駅から坂を下って間もなくのところに建っていましたが、
高い塀に阻まれて外から伺うことはできませんでした。
私も見学会の知らせを見るまでは、存在さえ知りませんでした。

施主である三井守之助は、旧三井財閥本家三井高保の三男で、芝浦製作所会長、
三井銀行取締役を兼任しながら三井合名会社に貢献した人物。
設計は、宮内省内匠寮技師であった木子幸三郎の手によるもので、
はしたない言い方をすれば、出すべき人が出して、作るべき人が作った、ハイグレードな別荘建築です。

外観はハーフティンバースタイルですが、どことなく和風の雰囲気を醸し出しています。
その外観上で最も特徴的であるのが、1・2階に跨って張出し窓状に突起している、半六角形のサンルーム。
鎌倉市の鎌倉文学館(旧前田家別邸)などにも同様のものが見受けられますが、この部分を含め、
2階一面に連なっていく窓は、陽光を積極的に取り込もうとする開放的な造りになっています。
内部は、玄関や階段まわり等の一部を除いては、ほぼ和風の造り。
部屋は1・2階でそれぞれ異なる和の様式が用いられていました。

ところで、当別荘はマンション建設のため、解体となりました。
周囲の運動等により、一時期は周辺の緑地保全計画に含めて
建物を保存活用していく方向で検討が進められていただけに残念です。
建物の部材は3分の1程度保管されているとのことで、いずれ復元された姿を見ることができるでしょう。(仁木)

Data
所在地:中郡大磯町1019
構造:木造2階
設計:木子幸三郎
施工:清水組
建築年代:昭和2年


 

一階廊下部分。寄木細工が美しいです。

中2階?入り口部分のステンドグラス。

室内最大の見せ場、2階のベイ・ウィンドウ。ガラス6面に小鳥たちが戯れています。

 



(C) 近代建築アーカイブクラブ All Rights Reserved.