旧足立正別荘

数ある葉山の洋館の中でも、知る人ぞ知る建物です。
施主の足立正は、王子製紙社長、ラジオ東京(現TBS)初代社長として有名な財界人。
設計者の佐藤功一は、早稲田大学の建築科の開設者であり、同大の教授となった人。
在職中に設計した、大隈記念講堂はあまりにも有名です。
また、全国の県・市庁舎を数多く設計したことでも知られており、
まさにビッグネーム同士の顔合わせだったのです。

また、この建物にまつわるひとつの謎があります。
それは、いくつかの資料で、この建物の設計は伊東忠太であるとしているところ。
伊東忠太といえば、東京大学の教授であり、平安神宮、築地本願寺など、
多数の有名建築の設計を手がけた建築界の重鎮であった人。
この住宅が、伊東忠太の設計である可能性は低いとは思いますが、
伊東は、この建物ができる数年前に、早稲田大学の教授に就任しており、
「早稲田大学」が謎解きのひとつのキーワードになりそうですね。

余談ですが、足立正は、法学博士として、名誉学位を授与されていますが、
それも早稲田大学。ちょっと不思議な因縁を感じますね。(仁木)

Data
所在地:神奈川県葉山町
構造:木造2階
設計:佐藤功一
施工者:酒井工務店
建築年代:昭和8年

赤い瓦屋根とハーフティンバー。木々の緑に映えます。



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