旧J.H.モーガン邸

山手111番館(旧ラフィン邸)の一般公開に際し、モーガン周辺の調査・資料収集をすすめるなか、
実は藤沢市大鋸に彼の自邸が現存することがわかりました。

広大な敷地に溢れんばかりの緑に囲まれ、その屋敷はひっそりと建っています。
この建物が建てられた昭和6年は、50代半ばを迎えたモーガンの、
最も脂がのっていた時期の作品であることに間違いはありません。
しかし、ここにはベーリック邸やラフィン邸のような華やかさはありません。静かで、質素な印象さえ受けます。
その理由は、この建物が日本建築の要素を多く取り入れているところにあると思います。
和室こそありませんが、欄間や縁側風の廊下、引き戸など。
あくまでも推測ですが、この建物の設計には、日本人である彼の妻に捧げられた要素が多分にあるのでは、と思います。
もし彼が欧米人の妻を迎えていたら、この建物は間違いなく、ちがった形になっていたことでしょう。(仁木)
※残念ながら、一部を残して焼失しています。地元有志を中心に再建に向けた活動が行なわれています。

Data
所在地:藤沢市大鋸
構造:木造1階
設計:J.H.モーガン
施工者:
建築年代:昭和6年

美しいデザインが施された門。
これを見れば大戦中に供出させられたという、
外人墓地の門が素晴らしかったという話にも頷けます。

木々に覆われた屋敷の全体を見渡すのは不可能。
これは玄関部分。頑丈にできています。

南側縁側にあたる部分。
これだけ見ると全くの日本家屋。

落ち着いた応接室。独特なデザインの桟が印象的。
ここにモーガンが暮らしていた・・・そんな重みも感じます。



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